学部長インタビュー

矢上祭に期待するもの

―――今年の矢上祭のテーマは「FRONTIER」です。新たな価値の創造と発信の場ということを目指して、学生同士が自己表現する場所、理系の学術的な面を主力にしていきたいという思いを込めて「FRONTIER」としたのですが、稲崎学部長は矢上祭に対して何を特に期待していますか?

矢上祭に対して期待することは3つある。

1つはまず大学のイベントですから、やっぱり学術的な色彩っていうか、アカデミックな側面が必ずないと。ただ遊びだけではないと思うんですよね。だからそういう側面は必ず出してもらいたい。

2番目は、やっぱり何年か前から近隣の人達を巻き込んでいますが、そういうことを謳うのも大事なことですね。是非今年も矢上キャンパスの近隣住民の方々が喜んでくれるような、足を運んでくれるような企画を立ててもらいたい。

3番目は、これは今まで全然そこに注目してなかったと思うんですが−−ぜひ今年は特色を出してもらいたいと思うのが−−留学生がすごく増えてるんですよ。今年も全部合わせるとおそらく170人はいます。研究者まで合わせるともっと。

それでそういう人達が見えるような企画っていうか、国際的なキャンパスなんだという所が見えるような。あるいは、留学生達もそれに喜んで参加できるような企画。これは是非、それこそ外から見に来た人が感じるような企画を盛り込んでもらいたいと思います。

例えばそれぞれのお国柄を発揮するような部屋を作ってもいいじゃないですか。世界各国からいるんだから、アジアばっかりじゃないんですからね。

―――何か他にこういった企画・催しがあればいいというものはありますか?

昔は各研究室の教員なんかももっと参加してたと思うんですね。色んなことに。最近あんまり参加してないんじゃないですか?教員が。それは君達も淋しいと思うと思うんだけど、どうしたら参加してくれるかということを考えて欲しいですね。

それから、再来年慶應義塾は創立150年でしょ。それも今度の矢上祭の時にはちょっと盛り込んだ方が、まぁ今年だけじゃなくて、来年もそうですが。150年に向けて、なんかこう盛り上がっていくような雰囲気作りもあった方がいいと思います。それで2008年は150年だけど、2009年は理工学部の70周年なんですよ、実は。

不思議なのは、医学部に行くとわかるのですが、福澤諭吉先生の肖像画や銅像が随所にあるんですよ。これ意外と理工学部ってないでしょ。藤原銀次郎さんの銅像を中庭と創想館地下1階の警備室の隣に作ったんですが、なんかそういう創立者とかそういう人達の存在が見えるような何かがあった方がいいかもしれない。

藤原銀次郎さんは1939年に藤原工業大学っていうのを作って、それを1944年に慶應義塾理工学部に寄付したんです。福澤諭吉先生は慶應義塾を作ってるときに、最初から工学あるいは理学の分野は大学として絶対必要だって最初から言ってたわけですよ。だけれども、やっぱり設備にお金がかかるということでできなくて、それでずっときたわけなんです。

これからの「理工学部」

―――稲崎学部長は来年の3月で退任されますが、今後慶應の理工学部はこういう姿であるべきだ、というビジョンは何かありますか?

やっぱり、大学の役割っていうのは研究・教育という両輪がありますけれども、研究という面では、社会に対して新しい知識を生み出していくわけですよね。そういう面で、とにかく独創的であってほしいね。

産学連携、産学連携って今みんな活発ですけれども、やっぱり企業と同じレベルでやっていてはしょうがないので、お互いのいい点が発揮されていかなくてはいけない。じゃあ、大学のいい点はというと、やっぱり独創的なアイディアが出るということだと思うんですね。お金かけて時間かければ誰がやってもできる、というようなことをやっても意味がないわけで。そういう大学の役割っていうものを、研究開発の連携という面で、よく認識することが必要だということです。

あとやっぱりものすごく大事なことは、大学の社会貢献ってことだね。研究開発していいもの創ってみんなが喜んでくれるもの作るっていう面での社会貢献っていうのもあるけれども、それよりももっと大事なことは、人材の育成だと思うんですよね。つまり、教育って面での貢献。まぁ慶應の卒業生はみんな頭がいいばっかりじゃなくていろんな面で、人間力が大きいっていうか、そういう評価を得られるような人材を育成して輩出するということで社会的な評価を高めていくっていうのが重要だと思います。

―――慶應義塾は「インターナショナル」「学生自身による活発的な研究活動」という方向に進んでいると思うんですが、理工学部としてそれにどうコミットしていこうとお考えですか?

ちょっと焦点しぼって言えば、海外に目を向けたい、活躍したいって学生がいればそれに対して最大限の環境を提供しますよ、チャンスを与えますよ、だからそれに乗ってくださいと。

大学院生になると国際会議で発表するっていうことも大事なわけです。そうするとやっぱり国際会議に行かなくちゃいけない。そうするとお金もかかるわけです。海外に行く人に対しては旅費やなんかはほぼ100%支援しています、理工学部の学生に対しては。全額補助ってわけにはいかないけど、身銭を切らないで行けるようにはしている。

学生へのメッセージ

―――理系の学生には、どのようなことが期待され、求められていくとお考えですか?

学生は今、自分の持っている時間を、勉強しようと思ったら勉強に、自分のしたいことに全て使えるわけだよね。自分の好きなように時間を使えるわけ。だからそういう瞬間を大事にしてもらいたいし、なおかつ、今にしかできないことっていうのは、そういう時間を、やっぱり・・・・出来れば勉強に使うっていうかね(笑)

だってそういう贅沢な瞬間ってないんですから、将来社会に出ちゃったら、ね。思う存分自分の自由な時間を、将来のため、地固めに使って欲しいなと。もちろん体力作ることも大事だけどね。体力がなくちゃ何もできない。

それとやっぱり、活躍の場っていうのは日本国内だけじゃ決してないんだっていう、世界中が活躍の場だという認識を持ってもらいたいですね。今、我々も、留学生をここにどんどん呼び込むばっかりではなくて、どんどん外に送り出すこともやっているんですよ。色々な学校と交流協定を結んだり、文科省とか色んなとこの外部資金を獲得して学生たちが海外に留学したり、インターンシップに行ったり、そういうことがたくさん可能になっていているんです。

僕のところに今、マスターの学生が9人いるんですけど、全員5ヶ月以上海外に行っています、2年間の間にね、100%。大学に行ったり、企業にインターンシップに行ったり。行って帰ってくるとみんな大きく変わってきます。5ヶ月もあれば、みんな20代の人達だし吸収力も早いし、目の輝きが変わってきますよ。

―――今年は前野先生と石榑先生にご協力いただいて高校生に対する理系の授業みたいなのを催すんです。主に受験生や内部生を対象にしていますが、そのような理系の学生、あるいは理工学部を今後受験しようとしている人達に対して何かメッセージはありますか?

簡潔に言えば、慶應の理工学部はいいですよということです。どういう所がいいかというと、教員もみんな前向きですね。より自分たちのこのキャンパスの環境設備をよくしていこうという意欲にあふれているから、非常に受け入れ態勢としては魅力的だと思うんです。

具体的に言えば、今君らも知ってると思うけど学部生1学年約1000人いるわけですね。それで教員の数が理工学部で286名いるんですよ。割り算すると大体1学年当たり3.5くらいになります。これは、他の学部とか他の私立大学と比べてみると小さな数なわけです。それだけ密度の高い、丁寧な教育指導・研究ができるという、そういう環境です。

それでCOEのプログラム、あまり知らないかもしれないですけど、21世紀COEプログラムっていう5年前から始まっている、日本中の大学がやっきになった文科省のプログラムがあるわけですが、慶應の理工学部は理工学系の5分野全部採択されているわけです。それは他にはないんですよ。これはもう私立ではトップだし、社会的な評価もそういう風にちゃんと確立していると。いいとこですよと。(笑)

―――本日はお忙しいところありがとうございました。「インターナショナル」な学園祭を目指すべくがんばりたいと思います!

聞き手:北川達也,室井秀夫,原田直 編集:北川達也,小泉和也