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【特別企画第2弾】安西祐一郎塾長インタビュー

去る8月某日、夏の日差しがさんさんと降り注ぐ中、安西祐一郎塾長へのインタビューを行った。2008年、慶應義塾は創立150年を迎えた。慶應義塾では、これを記念するさまざまな事業が行われているが、この先慶應義塾はどのような方向に歩もうとしているのであろうか?その中で矢上祭に期待されるものとは?慶應義塾を率いる安西塾長に直撃した。

塾長と学部長 ~「慶應義塾」の先導者として~

――― 塾長となって、学部長であったときとの違いをどのような点で感じますか?

理工学部長の時は学部を将来どういう風にしていこうかということに、本当に心血を注いでいまして、学部・大学院等も含めて多くの改革を進めました。それが塾長になりますと、理工学部や大学院理工学研究科だけなく、慶應義塾全体について国際的にもトップレベルに持っていかなければなりません。そういう点で学部長の時とはかなり違った、大きな視点が求められるようになりました。

また、塾長というのは理事長、つまり経営の責任者でもありますから、教育・研究・医療等のソフト、施設・学習環境等のハード、財務・財政基盤等のファイナンスの3つを全部総合して、強化していく必要があります。それが塾長としての一番大事なことです。これは学部長とはまったく違います。さらに、対外的な、たとえば日本全体の教育研究の問題とか、それからさらにはもっと世界での色々な大学との交流の先頭にも立つことが求められます。

こういった広い視野というものが必要になる点に大きな違いを感じました。

インタビュー風景1

塾長と慶應150 ~次の150年のために~

――― 今年2008年は慶應義塾創立150年ということでさまざまな記念事業が行われていますが、個人として特に慶應150ということで意識されていることはありますか?

慶應義塾の150年というのは、幕末に福澤先生が塾を開かれてから150年ということで、これは日本の近代化の歴史とも重なります。私立の学校として、国に頼らずに、でも国を先導してきた、そういう歴史です。

それで、ちょうど今年が150年ということですが、逆に今年はこれから先の出発点でもあるわけです。こうして考えると、これからの時代を担う人たちをいかに育てるかが、今大きな課題のひとつとしてあります。幕末から明治にかけての福澤塾の塾生は、日本の近代化に向けて新しい時代を創ってきました。皆さんには、明治時代のそういう人たちよりももっとグローバルな時代を創っていく人間になってもらいたいですね。

人材だけでなく、研究もまた、グローバルな課題に挑戦していかねばなりません。環境の問題、健康の問題、資源の問題、エネルギーの問題、あるいは情報ネットワークの問題もそうですが、もっとグローバルな目でもってテーマを考えなければいけません。

――― 慶應150のイベントとしては、今年4月に東京ディズニーシーを貸し切ったイベントが強烈な印象として記憶されているのですが、どのような経緯でこのイベント開催が決まったのですか?

あれは、「社中の一致協力」という目的で開催されたイベントです。慶應義塾の塾生といっても、一貫教育校から大学、大学院とたくさんいます。それから、慶應義塾の特徴として、卒業生(塾員)同士も仲が良く繋がりが深い。塾生から塾員まで、そういう人たちまで皆が一緒になって、「創立150年が来た」と感じることが出来る機会をどうしても作りたいということになりました。

それで、場所や時期を検討したところ、慶應の中では場所がないため東京ディズニーシーで行うことにしよう、塾生は授業のあるときは参加できないから日程は開校記念日にしようといった感じで決まりましたね。

このイベントを開催するにあたっては、本当にさまざまな塾生・塾員の方の協力もありました。

インタビュー風景2

塾長と矢上キャンパス ~キャンパスのもつ「独立自尊」の気風~

――― 塾長の考える、矢上キャンパスのいいところはどこですか?

まずは、慶應の独特の気風である「独立自尊の気風」が、キャンパスからも感じられることだと思います。この気風を持ったキャンパスで科学技術の本格的な勉強が出来るというのは、もちろん他にないわけです。これからの時代に、独立自尊の精神というのはますます大事になると思います。これはもちろん科学技術に限った話ではありませんが、中でも自分でもって考え、自分で行動のできる科学者や技術者は重要な存在になると思います。

それから、もうひとつのいいところは、日吉キャンパスに近いことだと思います。さまざまな学部の塾生が存在する日吉のキャンパスと面白いことに一体化している。これは大きな特徴だと思います。ロケーションとしては矢上と日吉は離れていますが、矢上に来るためには日吉を通る必要があります。だから、人里離れたところに理工系だけがいるわけではなく、日吉キャンパスや駅や商店街等を共有できる。これも矢上の特徴だと思います。

――― そんな矢上の学生に向けてメッセージをお願いします。

すばらしい環境があると思いますから、学部あるいは大学院に在籍している間に、悔いのない時間を過ごしてもらいたいと思いますね。自分の本当にやりたいことがあれば、それに向かってまっしぐらにやってもらいたいし、それがなければ、環境をぜひ十分に吸収してもらいたいと思います。それはもちろん勉強、研究室、卒論や修論もあるけど、それとともに「慶應のよさ」を吸収してもらいたい。これは、おそらく他大学の理工系の学生とは違った、これからの時代のリーダーになる素養を培うと思います。

慶應の独立自尊の気風がどういう風に現れているかといえば、例えば人を一直線で評価しない、順番を一直線でつけないという点にあると思います。「彼女はやっぱりこういう面でいい」、それで「頑張ってね、応援するからね」となる一方で、「彼はこういう面でいい、これも応援するからね」となる。こういう雰囲気が、他の大学に比べてすごくあると思う。自分で考えて自分で行動することと、人をきちんと人として立てるということ、こういう気風を是非吸収して欲しいと思います。

塾長と矢上祭 ~「塾生パワー」を発信せよ~

――― 本年度の矢上祭のテーマ『輪』について、どのような印象をお持ちですか?

すばらしいテーマだと思います。是非そういう「輪をつなげていく」という基本的なコンセプトが、矢上でもって取り上げられていくといいと思います。

輪といえば、創立150年の記念事業の公式ロゴ、これも輪っぽいのですが、離れています。つまり、誰に対しても開かれているし、誰でも入って来られるような、そういうオープンな輪なのです。ともすると、科学者や技術者というのは、ある意味ちょっと「内輪」でかたまりがちなところがあります。けれど、慶應の理工系は、そうではなくて、もっと人間らしい、開いた人たちだと思われたいですね。

だから、矢上祭の「輪」も誰に対しても開かれた、オープンな輪であって欲しいと思います。そして、来場者の方とともに盛り上がっていただきたいと思います。

慶應150のロゴ
慶應150のロゴ

――― 6年後は理工学部が創設75年を迎えますが、そんな中で矢上祭に期待されることは?  そうですね、慶應はキャンパスが分かれていて、矢上祭もものすごく発展して頑張っていますし、他のキャンパスでも四谷祭、七夕祭、秋祭、そして三田祭があります。そして、今年から芝共立キャンパスの芝共薬祭も加わります。キャンパスごとの学園祭がほかのところと連携して何か出来たらいいですね。

――― 実は「六慶祭」というまさにそのための組織が矢上祭の委員を発起人となって昨年発足したばかりなんですよ。やはり塾長としても、全体として発展していければよいとお考えですか?

全くそのとおりだと思います。大事なのは、矢上祭も他の学園祭もそうですが、塾生が主体になって積み上げてやっていることだと思います。その学園祭がさらに輪になっていけば、そういう慶應の「塾生パワー」ともいえるものが大きく前面に出てくるのではないでしょうか。

三田会等の「塾員パワー」というのは非常によく世間的にも知られていますが、それに負けないくらい「塾生パワー」というのもすごい!ということが広く認知されるといいと思います。マスコミとかも「三田会はすごい」と必ず言いますが、今度は「塾生はすごい」と、こういう風になればいいですね。

インタビュー風景3

――― 本日はお忙しい中、まことにありがとうございました!「塾生パワー」発信のため、これからも頑張っていきたいと思います!

インタビュアー:小泉和也 (機械工学科3年・矢上祭実行委員会広報局長)

写真撮影:坪井一菜(理工学部1年・矢上祭実行委員会広報局)

— posted by 小泉@広報局長 at 11:26 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

【特別企画第1弾】真壁利明理工学部長インタビュー[3/3]

第2回目の記事Link では,慶應義塾150年に関してお話を伺った.最終回となる今回は「矢上キャンパス」そして私たちが主催する「矢上祭」に視点を移していこう.

矢上キャンパスのいいところ~萌芽分野を生み出す雰囲気とは~

――― 学部長の考える、矢上キャンパスのいいところはどこですか?

学生の皆さんは他大学事情に接する機会が少ないために、「矢上キャンパスはいいところだ」と言われてもピンとこないと思うんだけど、理工学という学問の性質上キャンパスでは先生と学生が深く触れ合う機会が増え、両者が大変フレンドリーな環境が築かれ、共に学びともに研究する雰囲気が充満しています。

矢上キャンパスを見上げる
丘の麓から見た矢上キャンパス

また、このフレンドリーな環境は自由な雰囲気を生み、このキャンパスからは「あれっ」と思うような新しい分野がうまれてくることが、他大学の先生にも指摘されています。初期のインターネットもそうだったけど。[*]

(*脚注:日本におけるインターネットの先駆け的存在となったWIDEプロジェクトLink は1982年に矢上キャンパス内に構築された学内ネットワークに端を発している。なお、WIDEプロジェクトの代表である村井純氏は現在慶應義塾の常任理事を務めている。)

情報開示としての矢上祭 ~地域との共栄のために~

――― そんな中で矢上祭に期待することがありましたら是非お教えください。

今の時代、社会の一員としてどの組織であれ説明責任が重要となっています。その点、9年前はじめて矢上祭を企画し開催した段階から、日吉の商店街の方々が協力し参加して頂いている話を伺ったとき、矢上祭のバックボーンを見たような気がしました。地域住民の皆さんから見たら、この矢上の丘のビルディングの中で何が行なわれているか普段分からないと思います(笑)。

第8回矢上祭の様子
矢上祭当日は地域住民の方も多数訪れる.これは矢上祭の持つ「地域密着型」というひとつの特徴の現れといえよう.

それが矢上祭をきっかけに地域の人に来ていただいて、また見学もしていただける。これは広い意味での情報開示で、21世紀の社会で共生して生活していくために大切なことです。大きな意味で、学生、地域住民の皆さんと教職員の間のふれあいの場、これを用意してくれるということは、我々このキャンパスを運営しているものとして、非常に嬉しく思っています。

――― 本日はお忙しい中,どうもありがとうございました!

インタビュー終了後に
お忙しい中のインタビューありがとうございました!

インタビュアー:小泉和也(理工学部機械工学科3年,矢上祭実行委員会広報局長:写真右)

写真撮影:徐昰昱(理工学部化学3年,矢上祭実行委員会財務担当:写真左)

— posted by 小泉@広報局長 at 11:08 pm   commentComment [104]  pingTrackBack [0]

【特別企画第1弾】真壁利明理工学部長インタビュー[2/3]

第1回目の記事Link では,「理工学部」の今後に関してお話を伺った.2回目の更新となる今回はその続きとして,慶應義塾150年という点にスポットを当てる.

慶應義塾150年と「理工学部」~学問分野の再融合の契機として~

――― 今年2008年は慶應義塾創立150年ということでさまざまな記念事業が行われていますが、個人として特に慶應150ということで意識されていることはありますか?

この慶應義塾創立150年というのは福澤諭吉先生が鉄砲洲に蘭学塾を開いてから150年なわけです。ところで、いま我々が何の疑問も持たず受けている教育は、数学、物理、化学、電気とか機械とかいうように、色々な学問あるいは専門分野に分かれています。これは先達が自然科学や社会科学、人文科学の中を切り分けて作ったものです。これまで合理的な区分であったもの、それが学問化しているわけですね。現代においては先に指摘したように科学技術は多様化しています。これからの科学技術を担う皆さんは、細分化して切り分けられてしまった学問分野を再融合して、そこから新しい科学技術を生んでいく責任がある世代です。

この150年記念というのはそういう意味で、新しい学問、技術、あるいは科学技術の融合分野を生んでゆくきっかけになったと、しかもそれが慶應義塾の理工学部から生まれたと、後から振り返ったときに実感できれば非常に幸せだと思っています。

矢上キャンパス
矢上キャンパスの記念装飾(理工学部公式サイトより)

――― 「学問分野の再融合」を成し遂げるために、私たち学部学生が今なすべきことはなんでしょうか?

皆さんのように若い学部の学生さんにとって大切なことがあります。理工学部でそれぞれの学科の基盤学術をしっかり身につけて、その基盤学術を自分のツールにして欲しいということです。理工学の道を歩み続ける場合、大学院では、思い切りそのツールをスキルとして生かし融合できるような分野に進んで(あるいは切り開いて)欲しい。自分が持っていたものを出して、相手が持っていたものを吸収して、お互いにそこから新しいものを共同して考えてゆく(相手に供給するものがなくてはなりません)。そういう意気込みでやってほしい。これがきっかけで萌芽的分野が育ってゆく可能性が生まれます。

皆さんは、そういう意味では大変ワクワクする世紀にいるわけです。若い皆さんは「もう科学技術はみんな出来上がってて、これ以上、新しいことがほとんどないんじゃないか」と一人合点しているかも知れません。しかし、歴史を学んでみると、人類は今まで常にそうやって発展して次の時代を築いてきたはずなんです。

もう一つはよく言われることです。人生で友達を作ることが出来るのは学生時代です。なるべく多く、いろんな分野の友達を作ってほしい。個人が考えられること、あるいは個人の感性で理解できることには限りがありますから、友達を作るということは今後の人生を何倍にも豊かにするわけです。人間なんだから、やっぱり人生を豊かにしなきゃだめです。

第3回(矢上キャンパス,そして矢上祭に続きます.)Link

— posted by 小泉@広報局長 at 09:04 pm  

【特別企画第1弾】真壁利明理工学部長インタビュー[1/3]

去る8月某日、夕立の雷鳴がかすかに聞こえる中、真壁利明理工学部長・理工学研究科委員長へのインタビューを行った。昨年度のインタビューLink では就任直後に学部長としての抱負を伺ったが、それから約1年が経過した。

今年2008年は慶應義塾創立150年、さらに6年後には理工学部創設75周年を迎えるが、この先理工学部はどのような方向に歩もうとしているのであろうか?その中で矢上祭に期待されるものとは?矢上キャンパスを率いる真壁学部長に直撃した。

これからの「理工学部」~グローバル化と多様化の中で~

――― 学部長就任から1年と数ヶ月、一教員であったときとの違いをどのような点で感じますか?

皆さんが日常、目にし耳にする大学に関する記事には、大学教員の教育と研究と社会貢献について、その質と量をともに問うものが多いですね。私は去年の4月に学部長に就任するまで電子工学科の教員として、この3つを「プラズマナノテクノロジー」分野で行ってきました。ところで、この矢上キャンパスでは、およそ280名の専任教員と、これとほぼ同数の非常勤の先生方が150名近い職員の皆さんとともに、2000名の学部3・4年生、1800名の修士・博士課程の大学院生の教育と研究、またこれに関連した社会活動に日々活動しています。キャンパスの中で、すべてのことに責任がある立場になるということは当然ですが、専門分野をもって活動していた時代と比べて大違いですね。

21世紀のいま、教育グローバル化が急速に進みつつあります。欧米諸国にいても、我が国にいても、同様の教育が受けられるシステムへ移行しつつある、歴史的に見ても非常に大きな変革の時期です。同時に、地球温暖化に代表されるように「地球環境の保全」と、「持続的発展」いうキーワードで表現される時代背景のなかで理工学部を運営しています。もっとひろく人類の21世紀というのが、一体どういう科学技術の時代かと問われると、私としては「こんな時代ですよ」というよりはむしろ、科学技術の発展の方向が多様性に満ちた時代と認識しています。教育グローバル化と、科学技術の多様性と高度化の下で、どういう風に今後の塾理工学部と大学院理工学研究科が進んでいくべきかを学部長になってから深く考えるようになりました。

――― グローバル化と多様性の時代、理工学部はどのように進んで行くのでしょうか?

これから10年、15年先に科学技術が色々な方向に発展していくとき、それを受け止め中心となって各方面で活躍できる柔軟な力がわが国には欲しいわけです。そのために世界トップクラスの教育・研究拠点としてのキャンパスのプラットホーム―教育のプラットホーム、研究のプラットホームなど―の再整備の時期だと思っています。これをソフトとハードの両面から行おうとしています。このためにリノベーション会議を設け青写真を描いています。

矢上キャンパスのシンボル:創想館
矢上キャンパスの玄関14棟は「創想館」とも呼ばれる.

第2回(慶應義塾150年と「理工学部」に続きます.)Link

— posted by 小泉@広報局長 at 11:10 pm  

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